第94話 苦悩

「おれの名?ユダヤの民からはディバックと呼ばれている。律法に縛られることなく自由を満喫した俺をあの神は火炎地獄に鎖で繋いだ。そして千年の時がたち、ルシファー様が俺を火炎地獄から解き放った。あんたの命を奪うためにね」モリシの口でディバックが言った。
「俺にはモリシを撃てないだけの理由がある。それからモリシが死んだらお前も巻き添えを食って魔界に送り返されるぞ」モトが言った。
「モリシが死なずにお前が消えればいいんだよ」ディバックが念動力で拾いあげたCZ75の引き金を絞り、ハンマーを起こす。モトはモリシから全速力で離れた。モトは背中を撃たれたが軍服の下に警察用の防弾ベストを身につけていたため致命傷にはならなかった。

「悪運の強い男だね、あんた」モリシがモトの口を狙っているのを見て、モトは涙で照星を曇らせながらKP89の引き金を一気に引いた。

モトにはわかっていたのだ。ディバックを殺したらモリシの命運が尽きてしまうことを……

モトはモリシの腹を撃った。モリシは引き金を引こうとしたが、そのまま後ろへと昏倒し、天に向かって銃弾が放たれた。モトはモリシの身体に駆け寄った。モリシは傷口から激しく出血し、息絶えていた。

「モリシぃぃぃっ!」モトは慟哭した。

「この男相手には引き金を引けないと思っていたが、お前は本当に無慈悲な男だな」ルシファーの姿をしたイハラが笑いながら言った。
「なあ、今度こそお互いに決着をつけようじゃないか?ルシファー」モトが言った。
「命運がたっぷりと残っているから決着をつけようというのならお断りだぞ」ルシファーが言った。
「これは不可避な戦闘だ。そうだろ?」モトはKP89をルシファーに向けると鉤爪をつきたててモトを切り裂こうとしていたその一瞬に一気に引き金を引いた。ルシファーは腹を射抜かれ、後ろに倒れた。

「胸を撃たれれば反撃できた。あんたはそう思っているかもね……」モトはルシファーに完全復活の呪文を唱えた。(つづく)

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