| 第85話 コースケ危機一髪 「そうか、ベルゼブブもしくじったか……モトは運が強い。まあ確かにあの軍歴を見れば誰もがそう思うだろう。柏葉剣付騎士十字章受章者だもんな」直属の部下であるモトの人事ファイルを見てイハラが溜息をついた。 モトの軍歴はまさにエリートそのものである。ただし、モトは親衛隊の将来の指揮官を育成する政治学校を出ている訳でもないし、むしろたたき上げのSSメンバーから疎まれる大学の親衛隊士官訓練コースの出身者である。 「8回の戦闘任務全てで受勲しているにもかかわらず戦傷章受章は無し。悪運は強い方だな」イハラが言った。 「その悪運の持ち主を誰が殺すんですか?」イハラの副官の少尉が言った。少尉の正体はヴァンパイアだ。この世界のヴァンパイアは直射日光を浴びても灰になったりはしない。ただし、呪文は使えず、犠牲者を血族に加えることは出来ず、ヴァンパイアになる前の人間だった頃の能力しか発揮できない。 「アガレスはおろか、ベルゼブブまでやられた。ヴァンパイア如きに倒せる相手じゃない」イハラが言った。 「ヴァンパイアの血族を過小評価されては困りますよ。それにモトが倒せなくてもその手となり足となっているY4の奴らなら俺たちの血族に加わってくれますよ」少尉が言った。 「では、やって見ろ」イハラが言った。 「御意に」少尉はそう言うと陰謀を頭にめぐらせた。少尉は最初の犠牲者としてコースケを選んだ。少尉は血族の者の中から特務曹長を選び、コースケの生活パターンを探らせた。 コースケが夜勤を終えるのは午後5時。その後近所のスーパーマーケットで夕食の食材を買って、帰宅するのは6時半過ぎ。駐車場はコースケの自宅から徒歩5分の所にある。 ヴァンパイアたちはこの5分間を狙うことにした。そして、いよいよ決行の時を迎えた。 「おい、コースケ。今日、お前の家に泊まっていいか?」夜勤明けのネジがコースケに尋ねた。 「構いませんけど……僕にそっちの方の趣味は……」コースケが答えた。 「お前、命運が尽きている」ネジがコースケに言った。(つづく) 次のページに進む メニューに戻る |