第65話 魔王の晩餐

肉料理が出た。フォアグラとトリュフの乗った上品なステーキといった感じの主餐を一口食べると心臓が激しく脈打っているのがわかった。その感覚が甘美だったので、思わず特殊部隊員の悪いところであるガツガツ食いをしてしまった。肉を食べ終わった時、ボンバーは大いに反省した。

「すばらしい肉料理です。こんなに美味しい魚と肉を食べたのは初めてです」ボンバーが言った。
「君たちオーガ族にとっては最上の主餐を用意させてもらったからな。無論私に取っても最上の主餐である」イハラが言うとウエイターが海軍のセーラー服一式を持って来た。
「海軍基地で最上の肉を選ばせてもらったよ。18歳の3等水兵だ」イハラが言った。ボンバーは愕然とした。次の瞬間、ボンバーの筋肉は最大にまで膨張し、太くなった指には鋭い鉤爪が生え、耳は獣のように先端が尖り、口の中では犬歯が抜け、そこに牙が生えた。
「ど、どういうことなんです?俺、どうなっちゃうんです?」肉食獣と化したボンバーが言った。
「君の一族は私が長年探しつづけた人食い鬼の一族だ。食人をやめてから60年。人間と同じように暮らしてきたが、それも今日で終わりだ。君は食人鬼、オーガとして覚醒したのだよ」イハラが言った。人食い鬼と化したボンバーは目の前のイハラを見て驚きを隠せなかった。

イハラが魔王ルシファーだとわかったのだ。

「そ、そんな……准将殿が魔王だったなんて……」オーガとなったことで悪魔の目の能力に目覚めたボンバーは動揺を隠しきれなかった。
「君はもはや人ではない。私と同じ悪魔だ」イハラが言った。
「俺、人肉を食わなければ死ぬんですか?」ボンバーがイハラに尋ねた。
「死ぬことはない。ただし、食人は君たちオーガ族に交わること以上の最上の快楽を与える行為だし、人間の姿を取りたければ人肉を食べなければならない。そろそろ真の主餐がやってくる」イハラが言った。

堕天使のウエイターたちがカートに乗せて持ってきたもの、それは3等水兵の未調理の部分だった。3等水兵は首を捻り殺されていて、所々肉を切り取られていた。ボンバーは3等水兵の遺体を見て猛烈な食欲に精神を支配された。ボンバーは3等水兵の遺体の左足の肉を食べはじめた。(つづく)

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