第61話 検死解剖

秋葉原の事件を解決すべく、Y4はまずお台場のアベックと秋葉原の男性の傷についての所見を軍医に求めた。

「恐ろしい事件だ。犯人は犠牲者の頬の肉までありとあらゆる筋肉だけを食べている。無論、心臓もだ。そしてもっと恐ろしいことに、犠牲者は大量出血をしながら死んでいる。つまり、生きたまま食われたということだ。以上の件からして、犯人がゾンビでないことは明らかだ。ゾンビは犠牲者の内臓も食べるが、この犯人は心臓以外の内臓を食べない。ゾンビではない外来種の悪魔が侵入したということだろう」軍医が言った。ご丁寧に遺体の写真まで見せて説明してくれたので、タクオの顔は真っ青になっていた。

「そいつはグールだ。名前はシュンスケ・シャールピング。元陸軍外人部隊特殊攻撃部隊曹長だ。同僚を刺し殺して銃殺刑にされた後、砂漠の悪霊に取り憑かれてグールとなり、同僚の死に装束の軍服と制帽を奪い、日本人観光客を食った挙句旅費とパスポートを奪い、しまいには偽造パスポートで日本に帰国した」レザージャケットにジーンズ姿の男が言った。背丈は175cmぐらいといったところだが、その肉体はかなり鍛えられている。

「誰だ、こいつ」ヤツが訝しげな目で男を見る。
「帝国主義連盟陸軍外人部隊歩兵科中尉のシンジ・ファイフェンベルガーだ。外人部隊の日本人がおこした不祥事の後始末をするのがオレの仕事だ」男が言った。
「シュンスケの手口を見て判ったのだが、今から1ヶ月ほど前のサウジアラビア戦争でマツイという軍曹が所属する部隊が全滅した。撃墜された10機の輸送ヘリの中で唯一生存していたのがマツイだった。ここからは推論だが、戦死したマツイに砂漠の悪霊が取り憑き、マツイを食屍鬼、グールに変えた。グールとなったマツイは戦死者の筋肉を食って甦ったのだろう。事実事故現場を一週間捜索して遺体を回収したが、筋肉を失って内臓と骨だけになっている遺体が多く収容された。外人部隊の本部があるマルセイユでも連続殺人事件があり、同種の遺体が収容された」シンジが言った。

「シュンスケが刺し殺したのはマツイか?」ネジが言った。
「その通りだ。そして、同僚刺殺の罪で銃殺刑に処された。その時我々は大きなミスをした。マツイの遺体とシュンスケの遺体を同じ遺体安置所に入れてしまったのだ。そこでマツイに憑いていた砂漠の悪霊がマツイを捨て、シュンスケに取り憑いたと推論される」シンジが言った。(つづく)

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