第29話 密談

「『ザイオン』には一度行ってみたかった。無論わが勢力もわが国で教育を受けたスンジン皇子とヨンチョル皇子という駒は捨てがたい。それにわが国最大のファンドグループを率いるフォン・バイエルライン家は男爵家とはいえ市場を握っている。貴国が救助しないというのなら、わが国が救助する理由になる。表向きの渡航の目的は米州連合と合同の『ザイオン』の調査。これでどうだ?」モトが流暢な英語で言った。

「私の身分はどうすればいい?」ジョンファンが英語で言った。
「素直に言ってしまえ、『行方不明の皇子を捜索しています』とね」モトが言った。
「部隊はどうやって調達する?」ジョンファンが言った。
「SS第1特殊攻撃旅団にはY4というサイキック・ユニットがある。元々オカルト的事件に対応するための部隊だが、比較的自由に使える。メンバーは4人だが戦闘力は1個中隊級だ。何せ物は『ザイオン』だ。部隊の使用許可は得られるだろう」モトが言った。
「ありがたい」ジョンファンが言った。

「それよりジンホ王は何人の皇子を殺せば気が済むんだ?」モトが言った。
「国王は軍の最高司令官。皇子の従軍は王になるための試練なのだ」ジョンファンが言った。
「だが、誰とは言いたくないが、SS……いや、どの軍にも参謀本部の椅子に座ったままで軍指令にまで昇進する運のいい奴だっている。と、いうかどの軍でも参謀本部の椅子に座っているのは頭がいい奴で、前線に出るのは頭が悪い奴と定義されている」モトが言った。
「でも広開土王は常に最前線で軍を指揮した。その頃からのしきたりなのだ」ジョンファンが言った。
「広開土王の3世紀と今の21世紀とでは前線のリスクが異なる。あの頃は銃も機関銃も、戦車も航空機もなかった」モトが言った。

「だが、ジンホ王は独立戦争で生き残った。だから王になれたのだ。大韓王国の王は強くなければならない」ジョンファンが言った。
「まあ、確かにオレみたいに前線に出てもくたばらない往生際の悪い奴もいるからな」モトが言った。

「まずはY4を呼び出そう」モトは携帯でネジにメールを送った。(つづく)

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