第15話 サバイバル

「今のところは人間です」ヨンチョルが言った。
「銃を持っているならこの防衛戦に参加しろ」少尉が言った。
「銃を扱えるのは自分だけです」ヨンチョルが言った。
「じゃあ、お前だけ来い」少尉が言った。
「銃弾を持っているのはこいつらです」ヨンチョルが言った。
「わかった。お前ら。こっち来い」少尉が言った。ヨンチョルらは防衛戦を展開している部隊に合流した。

「自分はソ・クンホ近衛隊少尉。この部隊はジンゴン皇子の墓所を警備する近衛隊だ」クンホが言った。
「自分はヨンチョル・プリンス・オブ・コリア。陸軍士官学校の1年生です」ヨンチョルが言った。
「貴官が西から来た新しい皇太子殿下か。失礼した」クンホが言った。
「援軍は呼ばれたのですか?少尉どの」ヨンチョルが尋ねた。
「電話線が切られていて呼べなかった。近衛隊には独立記念日用の戦闘服以外野戦装備がないし、銃も独立戦争で使った旧式のM1ガーランドだ」クンホが言った。

M1ガーランド .30ライフル
「いつから開城は戦場になったんですか?」ヨンチョルがクンホに尋ねた。
「今晩だ。先の戦争では開城での戦闘が激しくて、戦没者の遺体は死体置き場で野ざらしになっていた。その遺体がいきなり動きだし、人間を襲い始めた。で、ここが防衛線になった」クンホが言った。ヨンチョルは背後から悪魔の気配を強く感じた。
「ストリート単位では守れない。多分、亡者に包囲される。堅牢な建物にこもって夜明けを待った方がいい」ヨンチョルはそう言うと墓所の方に銃を向けた。
「いくら皇太子といえども不謹慎だ」クンホがヨンチョルの銃を掴んだ。
「ジンゴン皇子以外、あの墓所には亡者はいない。夜明けを待つにはもってこいです」ヨンチョルが言った。
「ジンゴン皇太子、お許し下さい」クンホはそう言うと墓所を開いた。クンホは墓所に倒れこむようにして息絶えた。
「まさか!」ヨンチョルは月明かりの中、ジンゴンに照準を合わせた。ジンゴンは不気味な笑みを浮かべると呪文を唱えはじめた。ヨンチョルはジンゴンに発砲した。ジンゴンの額をヨンチョルの銃弾が貫いた。
「ふ、不覚……だがどんな武器を使っても悪魔は死なない。魔界に帰るだけだ」ジンゴンは最期まで不気味な笑みを浮かべ、倒れた。ヨンチョルらは墓所に移動し、夜明けを待った。夜明けと共にヨンチョルの仲間たちは一人120発の弾丸以外銃を含む全ての装備を捨てて板門店を目指した。ヨンチョルだけが銃を構え、先頭を走った。ヨンチョルと仲間たちは行きにかかった時間の半分で板門店に到着し、開城の惨状を伝えた。(つづく)

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