第13話 開城(ケソン)の地獄

皇太子として追尊を受けたヨンチョルは陸軍士官学校の1年に編入され、行軍演習として板門店(パンムンジョム)から大韓王国軍と革命戦線軍が激しい争奪戦を繰り広げ、大韓王国の第3皇子ジンゴン少尉もここで命を落とした開城(ケソン)へと向かい、ジンゴン皇子が命を落としたとされる地点にある墓所に大韓王国の国旗を立てることになっていた。

それは安全が確保されていたはずの演習だった。板門店を0800時に出発した一行だが、完全装備の行軍は生まれて初めての者が多かったため、到着予定が大幅に遅れた。ヨンチョルは帝国少年団から帝国青年団を経て、義勇SSに入隊し、2等兵とはいえ基本訓練を受けていたため、この行軍が苦になることはなかった。無論、ヨンチョルのこの経歴は改ざんされ、真実は隠蔽された。

「皇子の癖に足腰強いんだな」教官のイ・スンデ曹長がヨンチョルに言った。
「はい、曹長どの」ヨンチョルが答えた。
「おまえSSだったろ」スンデが言った。
「いえ、SSではありません」ヨンチョルが答えた。
「西側の帝国主義者は皆SSだ、わかったな」スンデがいった。
「はい、曹長どの」ヨンチョルが答えた。

一行が開城市内に入ったのは1730時を過ぎた頃だった。日は沈みかけていた。

「お前らの体力不足のせいでジンゴン皇子の墓所に旗を立てられなかったぞ。今日はこの瓦礫の中で野宿だ。雨が降っていないだけ幸運だったと思え」スンデがいった。
「曹長どの、腹減りました。フラフラっす」学生の一人が言った
「このマズイ戦闘食をじっくり味わえ。普段は食えた代物ではないが腹が減っていたら食えるはずだ。さあ全員、食え!」スンデが言った。
「ああSSの日本産戦闘食が懐かしい。あれはどちらかといえば美味だったのにこりゃほんと、普段は食えないほどマズイ……」ヨンチョルは戦闘食を食べながら思った。
「曹長どの、飢えた市民が何人もこっちに向かって来てます」級長がスンデに言った。ヨンチョルはK2突撃ライフルを構え、市民の方に向けた。陰陽師でもあるヨンチョルは他人の命運を見る「死神の目」の能力を生まれながらに持っていた。命運がないのに動いているのは間違いなく亡者である。また、悪魔と人間を見分ける目も訓練で身につけた。ヨンチョルはためらわずに連射した。ヨンチョルは2体を射殺した。(つづく)

K2 5.56mm突撃ライフル
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