第12話 クローズ13

クローズとは第三帝国用語で戦車兵を指す。最近でこそ車長がフラックジャケットとヘルメットを着用するようになったが、それ以前は今でも戦車兵に支給される丈の短い黒い上衣に旧型ヘルメット、もしくは帽子各種を装備していた。黒尽くめの戦車中隊は「クローズ(カラス)」と呼ばれるようになった。

戦車H中隊長、タッキー・シャラはある特命を帯びていた。それは機甲擲弾兵の進入前に戦車で敵政庁地区を地ならしするという役割だった。

タッキー・シャラの部隊が首都に侵入すると抵抗する部隊は存在しなかった。ただし、単独で行動しているスナイパーがいる建物にはレオパルド2A5戦車の120mm主砲で容赦ない射撃を行った。

レオパルド2A5戦車

「タッキー、レッド・カーペット地区を掃討しろ」大隊長のアツ・フォン・クプラー少佐がタッキーに命じた。タッキーの部隊は政庁街の目抜き通り、レッド・カーペット地区に向かった。政庁街には組織だって抵抗する部隊はいなかった。しかし、命令なしで行動している武装集団は存在した。事実、タッキーが上半身を車外に出すと、レオポルド2A5戦車に銃弾が浴びせられた。そして、そのたびにH中隊は戦車で建物ごと武装集団を駆逐した。

「H中隊、時間切れだ、もうそろそろ機甲擲弾兵B中隊がやってくる。残的掃討は彼らに任せよう」アツがタッキーに命じた。

タッキーはレッド・カーペットを制圧しきれなかった事にわだかまりを覚えたが、H中隊の本陣へと戻った。H中隊は中国との国境まで進出することを命じられた。H中隊は国境から20マイル離れた地点に移動した。そこには組織だって抵抗する組織は存在しなかったが、部隊を見る目は冷たかった。

「四面楚歌だな。素晴らしい歓迎ぶりだよ」タッキーがため息をついた。どうやら組織された敵の正規部隊は全滅したらしい。

ゲリラ化した男が爆発物を腹に巻いてタッキーの部隊に突進した。タッキーは機銃で男を撃った。男は戦車に危害を加えることなく自爆した。

「狂ってる……」タッキーがあたりを見渡すと、今まで戦車隊を取り巻き、冷たい視線を浴びせていた者たちがいなくなっていた。

その日の午後、機甲擲弾兵B中隊が政庁を落としたとの連絡が入った。9日間にわたったタッキーの戦争は終わった。(つづく)

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