| 第87話 ピンポン ヤツとトモティンは一見いつもと同じ夜を迎えていた。ただしネジから「夜明けまで誰も招き入れるな」と忠告されていた。食費手当で買ってきた夕食を前にヤツとトモティンはサッカーの試合を地上波デジタルで観戦していた。丁度赤いユニフォームのチームがゴールを決めた時にインターフォンが鳴った。断りを入れるため、トモティンがインターフォンに出た。インターフォン越しに催眠の呪文が聞こえた。 「馬鹿め、呪文を間違えて唱えてやがる」トモティンが言った。 「トモティン、玄関にいるのは悪魔だ。決して招き入れるな」ヤツが言った。 「わかったよ」トモティンとヤツは敵のピンポン作戦に備えた。案の定、相手は幾度となくインターフォンを鳴らし、防弾ガラス製の窓を幾度となく叩いた。 8時間後、時計は0100時を指していた。相変わらずピンポン作戦と窓をたたく音はヤツとトモティン、兵舎住まいのタクオを苛立たせている。 「打って出るか?」トモティンが言った。 「ああ、そうしよう」ヤツが言った。タクオがヤツの傍らで不安げにトモティンとヤツを見つめている。 「入れ」トモティンがインターフォン越しに言った。黒い霧の固まりが3つ、トモティンとヤツ、タクオを取り囲むようにして現れた。霧はすぐにヴァンパイア3体の姿に変わった。ヤツは刻鬼の印を結んだ。刻鬼武装SS少尉のヴァンパイアに抵抗された。トモティンは強力な破魔の呪文を唱えた。ヴァンパイア3体は一撃で灰になった。 「やっと静かになったな」ヤツが言った。 「と、言う訳で僕は寝ます」トモティンは宿直室に直行した。タクオは何時の間にか兵舎に帰っていったようだ。 「俺が当直?!」ヤツは自分の置かれている立場を理解して、絶句した。 幸い、0500時にタクオが起きてくれたのでヤツは眠い目を擦りながら当直室に向かった。当直室のベッドに身体を横たえる疲労が出た。ヤツは5秒で爆睡した。(つづく) 次のページに進む メニューに戻る |